ヒーロー
皆さんこんにちは。ラムベントお手伝いのワタベです。
「今度食事にでも行こうよ」
「久々に学生時代の皆で集まりたいね」
こういった会話、皆さんも必ず一度はした事があるのではないでしょうか。もちろん私もした事があります。でも大体こういうのは口約束で終わってしまって、実現しないのが常。楽しい約束が消えてしまうのは悲しいですが、でも実現しない事に何故だかちょっぴり安心したような、そんな気分になります。
今回も、そうだと思っていたんです。
今日、稽古場に来るなり寺田が
「リナちゃん(私の下の名前です)がやりたいって言ってたから、わし、ラジオドラマの原稿書いてきたんよ」
そう言って、突然メンバーに7枚の原稿を渡し始めました。
それは遡る事4日前。『市ヶ尾の坂』を成功させよう!と意気込んで、メンバー皆で決起会を開いた日の事です。演劇の話、学生時代の話、市ヶ尾の坂の話…色々な話題に花を咲かせた内の一つに、「音声劇つくりましょうよ」という話題が出たのです。元々は「役者には興味ないの?」と訊かれた私が「音声劇なら…」と答えたのが始まり。そこから企画大好きの井上が話を広げて「じゃあやりましょう!」になったのです。
でも、今ラムベントは『市ヶ尾の坂』制作中。ましてやお手伝いの身分である私の発言が、まさか実現するなんて、誰も思わないではありませんか。
それが、今日来てみたらこれです。「原稿書いてきたんよ」とさらりと述べる寺田。いやいや、「書いてきたんよ」ではありません。流石に動揺が隠し切れませんでした。
しかもその原稿、書こうと思い至ったのが昨日の夜だとか。7枚と短い原稿ですが、たった一晩で書き上げて来たようで…。仕事の片手間、市ヶ尾の坂の片手間、この人は何をしているのでしょう。寺田は「こんなことしてないで市ヶ尾の坂の演出考えろってな!(笑)」とセルフツッコミを入れていましたが、いや本当にその通りなのですが、この人は一体いつ寝ているのでしょうか。
という訳で、『市ヶ尾の坂』の稽古もせずに、寺田の書いて来た原稿を読み耽るメンバー。私も読ませて頂きました。
…演出家の頭というのは、一体どうなっているのでしょう。
ジャンルで言うと、恐らくシュールギャグ…?『市ヶ尾の坂』とは全くテイストの違った、とてもポップで親しみやすい原稿でした。
私は素直に「面白いな」と思いましたが、『市ヶ尾の坂』制作の真っ只中にこんな原稿を書けるなんて、その事実の方に驚きです。演出家というのは引き出しが沢山あるのもそうですが、脳内での引き出しの使い分けが大変お上手なよう。それぐらい本当に、『市ヶ尾の坂』とは全く違った、井上文華言うところの「『市ヶ尾の坂』制作途中に読むと、一旦頭がすっきりする感じ」の作品でした。要するに、とてもライトで分かりやすい作品な訳ですね。
口約束で終わる筈だった音声劇のお話。原稿の初稿まで出てきてしまっては、もしかしたら本当に実現してしまうかも…?
『市ヶ尾の坂』とは別に、注目して行きたい話題が一つ、ラムベント内に生まれたようです。