Lambent インタビュー 井上素行①
インタビュー形式でメンバーの素顔に迫るラムベントインタビュー。
第4回はラムベントの敏腕制作にして熱血直球系俳優、井上素行です。
インタビュワーは井上文華でお届けします。
人前で演じる幸せ
―芝居をはじめたきっかけを教えてください―
小学校の頃に不登校の子供たちがやっていた『メディアからの贈り物』というお芝居を見に行ったんですよ。そのお芝居がすごく印象的で。すごくシリアスで最後は救いがなく終わっていくお話だったんですけど、それに引き込まれた。自分もそこに入ってやってみたいなと思ったのが、最初のきっかけでした。
そこに参加したかったんですけど、稽古の時間帯が平日の昼間とかで。不登校ではなかった自分は参加ができなかったんですね。それで断念せざるを得なくて。それが小学校5年生の時だったんですけど、中学校は演劇部がなくて。じゃあ高校はとにかく演劇部があるところに入ろうと思って勉強した(笑)
―演劇部に入るのを目指して勉強した?それは特殊ですね(笑)それで実際に演劇部に入ったのはいつだったのですか?
高校1年ですね。そのときに念願かなってようやく演劇部がある高校に入ることができて。演劇を始めることになったわけです。
―一番最初に演劇に触れた時の気持ちを教えてください。
中学校の文化祭で演劇をやるんですけど、それがすごく楽しみで。初めてやったときは稽古に行くのがすごく楽しくて、人前に立って演じることに幸せを感じたというか。充実しているなって感じたのを今でも覚えていますね。
―中学校時代って思春期で引っ込み思案な時期があったりするじゃないですか。そういったことはなかったですか?
中学はなかったと思うんですけど、小学校の頃は上級生がやっているフットボールの試合を横で眺めて点付けしている、誰とも話をせずに(笑)そんな子でした。
―そこは引っ込み思案というか、寡黙と言うか。
同級生と遊ぶのが楽しくなかったんじゃないかな、そのときは。中学校に関して言えば、引っ込み思案というわけではなく今でもそうなんですけど、目立ちたがりや(笑)ですね。それが根底にあるのかな、芝居をやっているのって。だから主役がしたい(笑)
―井上さんはどの役がしたいと言われたら、主役がしたいと答える人ですよね(笑)
そうそう。だから目立つのが好きなんだろうな自分は、って思います。
一番なりたかったのはアイドル
―目立ちたいという話に付随して、井上さんはご自分のことナルシストって言われますよね?自分以外にナルシストだと主張する人がいたら井上さんはどう思われますか?
出会ったことないからよくわからないけど、自分みたいに鏡が好きだとか常に窓に映った自分を見ている奴がいたらこいつうぜぇなって思うと思いますね(苦笑)うちの奥さんの話ですけど「ナルシスト嫌い」って言われるし、「また鏡見てる、鏡捨てようよ」みたいな(笑)客観的に自分を見たら、こいつ大してかっこよくもないのに幸せな人だなって思うと思います(笑)
―目立つのが好きとのことですが、映像の道に行こうとは思わなかったのですか?
声優になりたかったんですよ。そういう気持ちがあって劇団21世紀FOXの研修所に入ったんですけど、実際のところ声優になりたいんだったらFOXに入っちゃいけなくて(笑)もちろんいけないことはないですが、劇団なので声優がメインではないからそういう機会が少なく僕はその機会がなかったんです。でも憧れはありました。そうそう、アイドル声優になりたかったんですよ。
―ライブをしたりCDをリリースするようなアイドル声優?
そうアイドルになりたかった、もっと言えば(笑)そのことに24、5歳ぐらいのときに気づいて、それを劇団の先輩に話したら遅いよって言われて(笑)
芝居という「嘘」をつき通す
―では劇団21世紀FOXに入ったのは声優になりたかったからですか?
一番の理由は、ずっと独学で誰かにお芝居を教えてもらうという経験がなくて、一度お芝居の勉強をしっかりとしたところで学びたかったっていうのがありますね。社会人になって貯めたお金で、自分のしたい勉強をしに行くんだ。自分で貯めたお金だからこれ使ってやっていいんじゃないかって思って。もちろんプロになりたいって気持ちもあったし、野心とか夢とか色々あったけれども、芝居の勉強をしたいっていうのがまず一番。でゆくゆくは、自分がすごく有名になってスキルもつけて、それで広島に帰って広島の演劇を盛り上げられるような人になれたらいいなって。そういう夢はありましたね。
でもやっぱり行って良かったですね。井の中のカワズだっていうことに気づけたし、東京行く前の、芝居の勉強をちゃんとする前の自分っていうのは、何が良いもので何が良くないものかっていうのもよくわかってなかった。自分自身がそこそこできるという誤った認識をしていましたし。今は自分自身が全然できないということもわかった上で、じゃあ何ができるのかとか、どうやったら良いものが作れるのかとかそういうところがちょっとわかるようになった。
―劇団21世紀FOXの経験で井上さんの中に物差しができたということですか?
そうですね、たぶん。座長の肝付さんが言われていたことで今でも一番強く残っているのは、お芝居っていうのはそもそも嘘だからその嘘をお客さんに見破られちゃいけない。お客さんがこれ嘘だって思った途端に、その芝居が嘘だとばれてしまう。だから今自分が注意しなくちゃいけないなって思っている表現は、そのときの気持ちや感情よりもどういう状況なのか。どういう状況だからどう感じているのかってことを大事にしなきゃいけない。一番基本的なところは、暑いとか寒いとか、明るいとか暗いとかそういうことを踏まえたうえで今自分がどう感じているのかとか、相手に対してどういうふうな印象を持っているのかということを表現しないといけないなと僕自身は考えていますね。