Lambent インタビュー 丸橋一平①
インタビュー形式でメンバーの素顔に迫るラムベントインタビュー。
第5回はラムベントの副代表的存在、丸橋一平です。
寂しさから始めたお芝居
―お芝居をやり始めたきっかけを教えてください―
あまりの寂しさに耐えきれずというところが、お芝居を始めたきっかけになるかなと思います。大学を卒業して就職をした先が全く自分に縁もゆかりもないところで、知人友人も誰もいない。仕事場の人との関係もまだこれからっていう。本当に今ここで、アパートで自分が何かで死んでしまったら2週間ぐらい発見されずに、腐乱死体で発見されてしまうっていう不安感から、友達を作らなきゃいけないと思ったんです。コミュニティ誌みたいなのでたまたま見つけたのが演劇サークルの劇団員の募集でした。そもそも演劇もプロのお芝居を見るのは好きだけど、高校演劇とかは恥ずかしくて痒くて。とてもあんなところに入れないと思っていたんだけど、ちょっとやってみようかなって。気に入らなかったらやめればいいだけの話だし。それで始めたんです。
―やり始めた場所はどちらですか?
京都府綾部市という京都の賑やかなところより海が近い町という。そこの地元の劇団で始めました。
そこで入った劇団は、代表の方が東京に行って俳優になるんだって頑張られて、夢やぶれて地元に戻って来られた方で。でその他の方は全く演劇経験のない方ばっかりだったんです。
―では代表が他のメンバーに教えられたわけですか?
教えてもらったという感覚はなくて、代表の書く作品がものすごく普段しゃべる言葉に近い言葉で書かれるんで、それをその通りに読んでいったら何となく成立するっていう。
―どのくらいそこには所属されていたんですか?
結局2000年から5年間ぐらいですかね。
―そこで芝居のいろはを学んだと。
いろはというか入口だけですね(笑)
―では代表の方が全て台本を書かれていたんですか?
基本全て当て書きで、オリジナルの台本を。一度その方が書かれた台本をお借りして、劇団春一番さんで青少年センターの地下で、ヤングフェスタで僕が演出でやらせてもらったのがあるんですが。とある病院の喫煙室に集まる面々。その喫煙室で集まって、夜中ガヤガヤやってて看護婦さんに怒られて部屋に帰るという。また次の日集まって怒られてという、そういう日常の何日間かをストーリーにしてお芝居にしたものだったりとか。廃校になる学校の校舎に都会から20年ぶりに帰ってきた一人の男性と地元で過ごしていた若者とがそこで出会うんですけど。20年ぶりに帰ってきた男性がその取り壊しになる校舎で、小学校の時にやりたかったけどできなかったことを追体験する。でも結局どうにもならないんだけど前向いて歩こう、みたいなそんな感じの話をやりました。
言霊と発声
―話は変わりますが、発声についてのワークショップを開かれていますが、丸橋さん自身はどういったところで勉強をされてきたのですか?
発声に関してはミュージックシアターASAKITAというところで、総合監督と演出をされている三上先生という方がいらっしゃって。その方が発声・発音というものに拘られてて、その方が毎週日曜に舞台表現クラスというグループレッスンを持っていらっしゃるんです。そちらで4年ぐらい発声の基礎とかだったりを叩き込んでもらってます。自分自身セリフがちゃんと聞こえてこない、言えていないお芝居っていうものがものすごい退屈で長く感じてしまう。逆にセリフがちゃんと聞こえるお芝居、何を言ってるかわかんないってことのないお芝居は体感している時間が短く感じる。発声をちゃんと訓練して喋れるようにしておかないと、お客さんが寝たり長いと感じてしまう。集中が切れるんですね。だから自分自身では突き詰めてやっていきたいなって思っています。
―では丸橋さんから見てどういうところで発声で苦労されている人が多いですか?
自分の響く位置がどこにあるのかわからないという方が多い。よくセリフが歌うとか笑うとかっていうのがあるじゃないですか。ああいうのはやっぱり癖になっちゃうので、聴いてるお客さんはそこで引っかかって集中が切れたりすることが多い。本人はまっすぐに出しているつもりなんだけど、実際は抜けてたり。ではもう一回やってみてくださいって言ってもなかなかまっすぐの息を吐いた上に言葉を発していくってことが難しいみたいで。他人のを聞けばうねうねしてるってわかるんですけど、自分のはなかなかわからないみたいで。
―発声に関連してなのですが、以前ラムベントでワークショップをしたときに言霊についての話を少しされていたのが印象的でした。詳しく教えていただけますか?
昔から言葉には力があって、言霊が宿るんだと。でも迷信的な話ではなくて五十音一音一音にそれぞれ印象ってものがあって。例えば「あ」だったらあけっぴろげなとか口を大きく開けて喉の奥まで見せてするような発声なので。「あ」の音っていうのは人との距離を一気に縮める音なんだって言われています。そういった一音に対する印象があって、その印象が組み合わさって言葉になる。単に言葉に霊的な力があるということよりも、言葉が持ってる印象が言葉を発した人・言葉を聞いた人に影響を与える。なので言霊っていう言い方をしているけれども、そういったものがあるんじゃないかって考えています。
風格と停滞の「ダ行」
―では五十音の中で特に好きな音はありますか?
この音が好きというよりも、お芝居のセリフを読む中で特に気をつけていることがあるんですが。ダ行の音っていうのが堂々としたとか土台とか。地に根をはやしたようなどっしりとした印象を与える。「だ」「で」「ど」っていうのは堂々とした風格を表す音。でもその風格が逆に停滞を表すっていう。ダ行の音で「だから」を入れるとお客さんに停滞感を与えるってことを意図的に考えながらやっています。うまくいくときとうまくいかないときがあるんですけど。
―それはすごく奥が深いというか、台詞を理解するうえでも指針になるというか。
マ行を多用すると甘えた口調になる。だから台本でマ行を多用して書かれていたりすると、このキャラクターって甘えん坊なんじゃないかなとか。という役の解釈をする上でも僕の中では活用してやっています。