Lambent インタビュー 井上素行②
ラムベントインタビュー、井上素行の第2回です。
東京と広島で感じたお芝居についてのことや奥様との出会いなど幅広く語っております。
「東京」の芝居と「広島」の芝居
―劇団21世紀FOXの話になったのでお伺いしたいのですが、芝居のつくり方で東京と広島で違いを感じられていますでしょうか?あるとしたらどのような点ですか?
お芝居はどこでやってもお芝居で、違いはないと思います。ただ、東京の方がレベルの高い人がたくさんいると思うし、逆にレベルの低い人もたくさんいるんですよ。で、テレビに出続けている人たちっていうのはレベルの高い人たちなわけだけれども、メジャーではないけれども実力はあるって人もたくさんいて。それは運がよければテレビに出られるかもしれないっていうぐらいの実力の人。そういう人は広島にもたくさんいると思います。東京行ったら売れる可能性があるんじゃないかなって人は。ただそこは運とか需要とかそういうものに左右されるから、必ずしも上手いから売れるとも言えないし下手だから売れないとも言えないところだとは思うんですけど。ただやっぱり僕は芝居をすることに関して東京と広島で違いがあるとは思ってないですね。東京の芝居に憧れる気持ちが、自分の物差しを狂わせているんじゃないかなって思うことが多いです。
―東京のお芝居に対してコンプレックスを持っている人にそう思うということですか?
僕自身のお芝居のレベルが低いから、東京で僕のお付き合いしている役者仲間の人たちの芝居も同じくらいのレベルで。その人たちに誘われて観に行って面白かったって思うお芝居って、10本観に行って2本か3本。でもその割合って広島でもあんまり変わらないんです、僕は。観に行って本当に自分が面白いなって思えるお芝居って多くないですよね、正直なところ。
―井上さん中で面白いと感じる点で外せない部分はありますか?
本の面白さを十分に活かしきれているかどうか。本が面白くなかったら、そもそも・・・ってことになるとは思うんですけど。僕はどちらかというとストーリー重視の傾向が強いので。それは自分の好みだから良い悪いではないと思うんですけど、面白みのあるストーリーの邪魔にならない芝居が観たい。もっと言えばその中に生きているキャラクターが役者が演じることによって戯曲を読むよりも面白いと思えれば、それが合格点なんじゃないんですかね、そのお芝居として。
伴侶との出会いはオーディション
―ところで話は変わりますが、井上さんはよく市内で奥様とのデートを目撃されていますが、奥様とはどんな出会いをされたのですか?
僕は自分のつれあいさんの話を外でもよくしていますけれども、同じ劇団の同期ですね、彼女は。初めて出会ったのはFOXのオーディションのときで、オーディションの面接のとき僕の右隣に彼女は座っててそれが最初の出会いでした。そのときは特に何も意識はしてなかったですけど。で、僕も彼女も同期でFOXに入ることになって。よく同期飲みとかをして、彼女もお酒をよく飲む人だったので、一緒に飲んで仲良くなって、付き合い始めるようになりましたね。
―奥様とお芝居の話をされますか?
芝居の話はしないです。今は割としてますけど、僕が一方的に芝居の話を。彼女の方から芝居の話を聞いたことはないですね。
―奥様もお芝居好きなんだと思うのですが、それはなぜなんでしょうか?
自分語りが嫌いなんだと思う。自分語りが嫌いなんだってことは言ってるし。熱い部分っていうものを人に見られたくないタイプの人なんだと思うし、彼女自身があまり熱くならないタイプの人なので。僕は熱いから、しょっちゅう彼女には暑苦しい人嫌いって言われるんですけど。そういうことが好きじゃないんじゃないかな、単純に。
近寄りすぎず寄り添える距離感
―『市ヶ尾の坂』の話になりますが、井上さんが演じる隼人はクールで思慮深く喧嘩も強いと寺田さんが仰っていました。井上さんはそれを聞いたとき稽古場で自分と正反対だと言われましたが、井上さん自身が隼人に共感できる部分はありますか?
最近気づいたんですけど、あんまり自分に重ねないというか。やってるうちに自分って元々こうなんじゃないかなって錯覚してくる。自分自身クールではないし、思慮深いかって言われるとそうだとも思えないんですけど、隼人の思考を理解はできる。それは共感とは違うかもしれないけど。共感したいとは思いますね。やっているうちにそのキャラクターのことを好きになるんですよね。好きな人のことってわかるというか。それはもしかすると自分の好みにしているのかもしれないけれども、その役を。実際に書かれていることとはズレてきているのかもしれないけれども、何となく自分なりの解釈ができるというか。だから自分の役をわからないと思ったことはあまりないです。
―初演は田口トモロヲさんという個性派俳優さんですが、意識する点はありますか?
ないです。僕、田口トモロヲさんよく知りません。プロジェクトエックスしか知りません(笑)
―そんな気がしました(笑)
でも、田口トモロヲさんが演じた隼人は『市ヶ尾の坂』のレビューを読むとすごくかっこよかったって。寺田さんも仰っていますが、距離感が素敵なんだろうなって思います。僕はどちらかというと距離ちか気味の人間なんで、常に。隼人自身の体験とかで、どちらかというと距離を親しい人とでもある程度距離を取るタイプの人なのかなって思う。でもあまり近寄りすぎず寄り添える距離感も持っているというか。そういうのがなんかいいなって、かっこいいなって思える役なのかなって。うまく演じられればそうなるんじゃないかなって思います。いい男ですよね。いい男というかモテそう。
―身近にそういう程よい距離感でモテる人っていましたか?
たぶんそういう人がいたとしても、自分はズカズカ踏み込んでいくのでわからない(笑)僕はとにかく距離近い人なので、仲良くなる上で。だから程よい距離感を好む人って僕みたいな人は嫌でしょうね(笑)