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「その日の10割」を積み上げて

皆さんこんにちは。ラムベントお手伝いのワタベです。

私はこの”演劇”という業界は初心者で、なんだか色々、理解していなかったり、履き違えていたりする部分が沢山あるような気がしています。そんな私ですが、今日やっと“演劇がナマモノである”という事を理解したような気がします。

本日の稽古は、なかなか稽古に参加出来ない深海が居るという事で、彼のシーンを中心的にやりました。同じシーンを、止めたり、通したりしながら、繰り返し繰り返しやるのです。

何度か稽古しているシーンでしたが、深海の演技でこのシーンを見たのは、私は初めてでした。いつも誰かしらが代役で入っているのです。

本キャストで繰り返し行われる同じシーンの稽古。とても興味深いものがありました。

先ず一つは、そのシーンで深海と一緒に舞台に立つ演者の事です。いつもは代役で練習していたシーンですが、今日は本役との合わせ。当然、本役の深海は、いつもの代役とは違う演技をして来る訳です。そうすると、深海と合わせる演者の演技も変わってきます。何処に回り込むのか、何処を見るのか、座り込むのか、立っているのか、深海との(物理的)距離はどのくらいか…。いつもとは違う立ち位置で、いつもとは違う見せ方で演技をするのです。

臨機応変…とでもいうのでしょうか。当たり前の事といえば当たり前の事ですが、相手が変われば自分も変わる。けれど物語の本筋を大きく逸脱する事はない。いつもとは違うモーションで、しかしいつもと同じ(自分がこれまで積み上げて来た)演技をする。舞台の見せ方は違うのに同じものをやっている。なかなか面白いものがあるなぁと思う訳です。

もう一つは、何度も繰り返し同じシーンをやる事によって、いくつもの違う演技が出て来るという事です。良いテイクもあればそうでもないテイクもある…そういうものが沢山生まれる訳です。

ところで、私は時々J-POPミュージシャンのライブツアーに足を運びます。ツアーというのは面白い物で、あれ、生き物なんです。同じ公演を、数回、数十回に分けて、数か月に掛けてやるのです。すると不思議な事に、ツアー開始序盤に見たライブと、中盤に見たライブと、終盤に見たライブとでは、まるで全く別物のようになっているのです。やる楽曲も、舞台装置も、演奏する人も同じなのに、何故だか全く違うライブに見えるのです。

何故かと言えば、ミュージシャンがそのツアーに“慣れ”てきて、”遊べる”ようになってきて、自分達の「ここだ」という核の部分を“掴める”ようになるからではないかと私は考えています。

序盤・中盤・終盤で全く違うライブ…ライブそのものが成長している。つまり、ライブとは生き物であると感じる訳です。

今日の稽古を見ていて、演劇もそうだな、と感じました。

本キャストで繰り返し繰り返し同じシーンをする。やる度に違う演技にしてみて色々挑戦して行く。そうして何度も何度も繰り返し練習して行く事で、自分達の「ここだ!」という演技を見付ける。ライブがそうであったように、演劇舞台そのものが成長して行く。

最後に一度通す時に、テラダは

「今日の10割で」

と言いました。

ライブがCDと違うのは、舞台がドラマと違うのは、ここです。

毎日毎日「その日の10割」を積み上げて、だけどその「毎日の10割」を取って置いておく事は出来なくて、つまり振り返ってみた時に「これが一番良いテイクだからこれを採用しよう」は出来なくて、ただただ毎日積み上げて、それを本番で、無事発揮しないといけない。

それを思った時に「あぁ演劇ってナマモノなんだなぁ」と、初めて実感した気がします。

生身の人間が“生”でやる舞台です。計7回公演、少しずつ違う公演になるかもしれません。でもそれは本番さえも糧にして、毎回、全公演「その日の10割」を出し切るという事。

本番では「練習の10割」を出し切れるよう、ラムベントメンバー、毎日稽古に励んでいます。

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